青木尊之 東京科学大学 総合研究院 特任教授青木尊之 東京科学大学 総合研究院 特任教授

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2024

空飛ぶクルマのフリーフライト・シミュレーション

ドローンとは桁違いの安全性が求められるが,空飛ぶクルマのシミュレーションは皆無.高速回転のローターに対しアクチュエータライン・モデルを導入することで,ローターの回転数だけを指定して計算機の中を飛行するフリーフライト・シミュレーションが可能

1000本の流木を含む流れのシミュレーション

1000本の流木を含む自由界面流れを個別要素法とAMR-LBMでシミュレーション.不透過型堰堤に付設された捕捉工にさまざまな長さの流木がどのように捕捉され,流れを閉塞するかを解析.

多数の巨岩を含む土石流シミュレーション

土石流の泥流をビンガム性非ニュートン流体とし,岩石を個別要素法でモデル化し,1000個の巨岩を含む土石流をAMR-LBMでシミュレーション.河床に凹凸を付けることで巨岩が土石流の先頭を走る現象を再現.

ミルククラウン・シミュレーション

PLIC-VOF法で気液界面を識別し,Hight Function法で表面張力を計算することにより界面近傍のSpurious Current を1/100以下に低減.運動量保存スキームとAMR法を導入したオールスターの手法をGPUに実装したミルククラウン・シミュレーション.格子解像度の収束性を確認.

2023

大谷投手のスイーパーの空力解析

2023年のWBC決勝で大谷翔平投手がトラウトに投げた最後の1球がスイーパーである。映像からも、あまり落ちずに横に大きく曲がる軌道を確認できる。ボールの回転が水平ではなく、回転軸がバッター方向に傾くことで縫い目による(マグヌス効果とは違う)揚力が発生することが分かった。

高熱流束の核沸騰シミュレーション

壁面加熱度の違いで核沸騰の様子が大きく変化.PLIC-VOF法によるSharp InterfaceとHight Function法で相変化を高精度に計算.弱圧縮性流体計算手法によるシミュレーションをGPUスパコン上で実行し,高熱流束の核沸騰を再現.

車の水撥ねシミュレーション

水たまりや還水道路を車両が通過すると,水撥ねにより周囲に液滴が放出される。AMR法による詳細な気液二相流計算により,タイヤを移動境界問題として扱う水撥ねシミュレーションを実行した.PLIC-VOF法とHF法により気液界面をシャープに捉え,表面張力を高精度に計算することができる.粒子法などでは得られない液滴径の統計分布が -9/2 乗のべき乗則に従うことが分かり,シミュレーションでは計算できない解像度以下の液滴径分布の予測も可能になる.

2022

ジャイロスプリット・ボールの空力解析

2021年にMLBで最も打たれ難いと言われた大谷翔平投手のスプリットは、普通のツーシームのバックスピンではなく、ジャイロ回転しているとすると、ボール軌道がMLBの測定値と非常によく一致する。

スピードスケートの空力シミュレーション

スピードスケートの中でもパシュート種目は空力をうまく利用することが戦略に直結.風洞型ではなく,移動境界として3人のスケーターの相互の空力特性をシミュレーション解析.2人目のスケーターが最も低い抗力を受けると予想されていたが,2m離れると3人目の受ける抗力が最低.

2021

フォークボールの落ちる謎

フォークボール(スプリット)は低速回転のツーシーム・バックスピンであるが、急激に落下するの回転数が遅いだけではなく、負のマグヌス効果が発生していることがスパコンを用いた空力解析で明らかになった。計算にはキュムラント型格子ボルツマン法を用い、NVIDIA のTesla P100を 24 GPU用いて計算している。

アメンボの水面走行

アメンボが表面張力を利用して水面をすいすいと泳ぐ様子を弱圧縮性気液二相流計算手法とAMR (Adaptive Mesh Refinement) 法を用いてシミュレーションを行った。アメンボの主な推進力は、中脚をオールのように使い生じた水面変動によるCapillary Forceであることが分かる。

2020

激しくはためく旗

強風で激しくはためく旗は典型的な流体構造連成問題であり、風により旗が大きく変形し、それが風の流れに大きな影響を与え、それが旗の変形をさらに変える。キュムラント型格子ボルツマン法にAMR(Adaptive Mesh Refinement) 法を導入した大規模シミュレーションにより、旗の激しい運動と後端からの強い渦が連続的に放出されていることが分かる。

多量の流木を含んだ自由表面流れ

固体の浮遊物を多数含んだ自由界面の計算に対して、キュムラント型格子ボルツマン法をベースにフェーズフィールド法で界面捕獲し、気体側は流体運動を解かずに気圧だけを境界条件とした自由表面流れを計算している。気体側にはレベルセット関数によるVelocity Extensionを行い、自由表面近傍、物体近傍にはAMR(Adaptive Mesh Refinement) 法により高解像度格子を動的に配置し、大規模計算を実行するために動的負荷分散を行っている。シミュレーション結果は、15m水槽および70m早々での実験と非常によく一致している。

2019

シャボン玉形成のシミュレーション

ストローから空気を吹き込み、グリセリン水溶液のシャボン玉が成長する過程を弱圧縮性気液二相流計算手法で解析した。直径が約12cmまで成長すると、液膜は117μmにまで薄くなり、気液界面に高解像度格子を動的に配置するAMR (Adaptive Mesh Refinement) 法が非常に有効である。

液体ジェットの乱れ

圧縮された空気の中に液体ジェットが噴出され、噴霧状に乱れて行く過程を弱圧縮性気液二相流計算手法とAMR (Adaptive Mesh Refinement) 法で計算した。均一格子で計算する場合に対して格子点を1/30に削減でき、NVIDIA Tesla V100 を1台使って11時間で計算が完了している。

イルカのフリースイミング

実際のイルカを丁寧にスキャンし、その形状に基づき尾びれを時間的に変位させることにより、イルカが計算空間をどのように遊泳するかをキュムラント型格子ボルツマン法でシミュレーションした。どのように推進力を得て、どの程度の遊泳速度になるかをスパコンTSUBAME3.0で解析した。OctreeベースのAMR (Adaptive Mesh Refinement) を用い、物体近傍と渦の強い領域に高解像度格子を適合させ、空間充填曲線に基づき動的に領域分割を行い、複数GPUを用いて効率的に計算を行っている。

2018

スプーンによる液膜形成

スプーンに水が当たることにより液膜が形成される過程を弱圧縮性気液二相流計算手法とAMR (Adaptive Mesh Refinement) 法を用い、2次元と3次元で計算した。液体は膜状になると安定化する性質があり、シミュレーションでも再現されている。

2016

固気噴流層シミュレーション

固体粒子と流体の相互作用を格子上で直接計算する固気混相流の流動層シミュレーション。流体計算は格子ボルツマン法により512×512×1,680格子を用いて計算されている。 81,920個の粒子運動は個別要素法で計算され、流体側は Interpolated Bounce Back 法により移動境界問題として計算される。

舞い落ちる512枚のイチョウの葉

複雑に舞い落ちるイチョウの葉の流体構造連成計算を格子ボルツマン法と個別要素法のカップリング手法でシミュレーションしている。イチョウの葉の形状はレベルセット関数で表現され、イチョウの葉どうしの接触は剛体連結された微小球により個別要素法で計算される。流体はLESモデルの入った格子ボルツマン法により1024×1024×2048格子を使い64GPUにより計算されている。512枚のイチョウの葉の中には回転しながら落下する葉もある。

2015

複雑形状物体の個別要素法による剛体シミュレーション

非球形粒子の衝突をモデル化するために、微小な球形粒子を剛体連結させ複雑形状を表現し、衝突などの相互作用力は微小球形粒子上で計算し、総和した力とトルクで非球形粒子の並進と回転運動を計算している。GPUにより高速計算が可能になり、細長い棒が回転方向に並んで行く様子が分かる。

5種類のサイズの異なる立方体からなる粉体に対し、内部で板が回転するとにより振動を与え、大きい立方体が上の方に移動するこサイズ・セグリゲーションを確認することができる。

1億粒子を使った多数の瓦礫を含む津波シミュレーション

複雑な形の瓦礫は微小球形粒子の剛体連結により表現し、流体はSPH法を用いることにより全てを粒子法で計算する。10,368個の瓦礫を含む1億1750万粒子による大規模津波シミュレーションを256GPUを用いて計算している。

ヒルベルト空間重点曲線を用いた領域分割の動的負荷分散により、スライスグリッド法を用いるより並列化のスケーリングを大幅に向上している。

2014

1.2億格子を用いた気液二相流シミュレーション

濡れた床に浸水するダムブレーク問題の8GPUによる二相流シミュレーション。早い段階で砕波が起こり、水と空気が激しく入り混じる様子が分かる。マルチグリッド前処理付きBiCGSTAB法でポアソン方程式を反復計算し、CLSVOF法の界面捕獲を使っている。

64GPUを用いた個別要素法によるバンカーショット・シミュレーション

1,670万個の粒子を用いた個別要素用によるゴルフのバンカーショット計算。 64個のGPUを効率的に使うためにスライスグリッド法により動的に領域を分割し、常に計算負荷とメモリ消費のバランスを取っている。

海岸線の構造物への津波衝撃解析

海岸線に設置された津波シェルターへの津波の衝撃解析を気液二相流で計算した。半陰解法で解かれ、Poisson方程式にはマルチグリッド前処理付きBiCGSTAB法を適用している。10mの津波が押し寄せた設定で解析している。

詳細な計算格子を用い、構造物(津波シェルター)の様々な場所の衝撃圧を詳細に評価することができる。津波第一波の衝撃圧は国土交通省のガイドラインよりも数倍高いことが分った。

2013

複数GPUを用いた2種類の粉体の攪拌

500万個の粒子を用いた個別要素法(DEM)による2種類の粉体の攪拌シミュレーション。DEM計算をGPUで高速に実行するための様々な手法が導入され、複数のGPUで計算する際には、2次元スライスグリッド法による動的負荷分散が導入されている。回転するファンはCADデータからレベルセット法に変換され、粒子の衝突判定が効率化されている。

2012

都市部10km四方の1m格子を用いた大規模LES気流シミュレーション

格子ボルツマン法にラージエディ・シミュレーションの乱流モデルとしてコヒーレント構造スマゴリンスキー・モデルを導入し、TSUBAMEのほぼ全体である4,032 個の GPU を使って、新宿や皇居を含む東京都心部の 10 km 四方のエリア( 10,080 × 10,240 × 512 格子)を 1m 格子で大規模な気流の LES 計算を行った。

高層ビル背後の発達した渦によるビル風や幹線道路に沿って流れる「風の道」などを確認することができる。(都庁付近)

2011

回転体により撹拌されるオイルと空気の大規模二相流シミュレーション

ギアがオイルを撹拌する気液二相流をギアとともに回転する座標系のシミュレーション。

2010

Al-Si合金のデンデライト凝固成長の大規模 GPU シミュレーション

フェーズフィールド法に基づいたAl-Si合金のデンデライト凝固成長の3次元シミュレーション。TSUBAME 2.0 の4000 GPU を用いて、ステンシル計算でありながら2.000045 PFLOPS の実行性能を達成。

次期気象予報モデル ASUCA による水平 500m 格子による台風シミュレーション

気象庁が次期気象予報モデルとして開発しているコード ASUCA をフル GPU 化し、将来の目標である水平 500m (現在は5km) 格子での台風シミュレーションがスパコン TSUBAME2.0 で可能に。現業コード を GPU による高速化できることを実証した意義は大きい。